スペシャル SPECIAL

梶浦サウンドのグルーヴと
魅力を全身で味わえる、貴重なライブ

――今回で13回目となる「Yuki Kajiura LIVE」。梶浦さんにとって「Yuki Kajiura LIVE」とはどんな場なのでしょうか。

 「ご褒美」ですね。私は自分の仕事が「作曲をすること」だと思っているので、ライブは仕事の感覚がないんですよ。私にとって、音楽を作ることは自分ひとりだけが喜びを感じる作業なんです。でも、ライブは作った音楽を大勢の方たちと共有して、目の前にいる人が喜んでくれたりもする。あまつさえ、拍手をいただくことまでできる、まるで天国のような場だと思っています。演奏する私たちも幸せだし、会場にいらした方々も幸せになっていただけるのだとすれば、まさに私にとっては「ご褒美」ですね。

――今回のライブで『ソードアート・オンライン』の劇伴をフィーチャーしたのはなぜでしょうか。

 「Yuki Kajiura LIVE」では、いろいろな作品から楽曲を選んで、演奏をしてきたんです。そうしたら来場者のアンケートで「ぜひ、作品単体のライブをやってください」という意見をたくさんいただきまして。ちょうど『ソードアート・オンライン』のサウンドトラック集「ソードアート・オンライン ミュージックコレクション」が発売されたこともあったので、時期的にもちょうどいいんじゃないかということで「featuring SWORD ART ONLINE」としてライブをすることになりました。

――『ソードアート・オンライン』の音楽ライブでは、2015年2月に開催された「Sing All Overtures」というTVアニメでの大きなイベントがありましたね。あのライブでも梶浦さんの劇伴ライブが披露されました。今回のライブは当時とどんな違いがあるでしょう。

 「Sing All Overtures」では冒頭に30分ほど演奏させていただきました(映像は「ソードアート・オンライン ミュージックコレクション」に収録)。今回はあのライブの延長線上にある感じです。あの冒頭の30分のライブがあったからこそ、スタッフも「これはライブがやれるんだ」と納得しまして、今回のライブが実現しました。当然、今回は「Sing All Overtures」よりもたっぷり、もっと派手に演奏したいなと思っています。

――『ソードアート・オンライン』の劇伴はかなり多彩な楽器を使っていらっしゃいますが、今回のライブではどのように演奏するのでしょうか。

 せっかくライブで演奏するので、短かい曲はアレンジを加えてみたり、メロディーをより際立たせるためのアレンジをしてみたりもしています。ただ、基本的にはなるべく「サウンドトラックで聴いたときのまま」の演奏を聴いていただきたいと思っていて。あまり不必要なアレンジは加えないようにしています。「サウンドトラック」というものは基本的には映像とともに聴くための音楽なので、生で聴いたときに楽しめるようなアレンジにしているつもりです。

――気になるのは選曲です。どんな楽曲が演奏されるのでしょうか。

 「ソードアート・オンライン ミュージックコレクション」には、これまで『ソードアート・オンライン』のために作った全131曲が収録されているのですが、その中で皆さんが聴きたい曲をピックアップしているつもりです。私が演奏していて楽しいなと思える曲も入れています。

――今おっしゃった「梶浦さんが演奏していて楽しい曲」とは?

 「Tonky(トンキーのテーマ曲)」ですね。劇中で1度しか使われていない曲なんですが、楽曲を作るときにものすごく楽しくて。ライブをするときは「『Tonky』演ろう! 『Tonky』演ろう!!』と私が言い続けることで実現しました(笑)。

ゲームが好きな自分の想いを
メロディーに乗せていく

――今回のライブで披露される『ソードアート・オンライン』の劇伴についてもお聞かせください。梶浦さんは『ソードアート・オンライン』の劇伴をつくるときに、どんなことを意識していますか。

 劇伴には必ず「意味」があるんですね。悲しいシーンであるとか、戦うシーンであるとか、そのシーンに音楽が「意味」をもたらせないといけない。だから、劇伴は音楽が流れはじめて3秒で、その「意味」がわかるように作っているんです。とくに『ソードアート・オンライン』の曲はなるべく素直に作ろうと思っていたこともあり、メロディーがはっきりしているんですね。だから、どんなアレンジをしても原曲のイメージが崩れにくいんです。それは私が今回、劇伴のバンドアレンジをしていて気が付いたことでしたね。

――今回のライブでは、原曲と楽器の編成を変えて演奏したり、原曲からアレンジをしたりすることで梶浦サウンドの本質を垣間見ることができるかもしれませんね。

 私の音楽は、実はリズムオリエンテッド(リズム主体)なんです。たとえ弦(楽器)が入っていたとしても、(それぞれの楽曲に)基本となるリズムが必ずあるので、オーケストラだけでは再現できないんですね。だから、私のライブはバンド編成で行っているんですね。バンドのグルーヴが入ることで、私にとっては理想的な状態で演奏できるんです。

――『ソードアート・オンライン』はVRMMORPGを舞台としています。そのゲーム的な世界の音楽を作ることは、梶浦さんにとってどんな経験でしたか?

 学生のころに私はロールプレイングゲームが大好きなロープレ・ゲーマーだったんです。ちょうど『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』がみんなを虜にしていた時代を過ごしていたので、《ソードアート・オンライン》のお仕事が来たときには、ゲームの音楽が作れる! と胸が躍りましたね。しかも、ゲームの中に「フルダイブする」という設定を聞いてワクワクしました。キリトくんたちも《ソードアート・オンライン》では大変な目に遭いますけど、街に訪れたときのワクワク感や、世界樹を前にしたときの胸の高まりは、私がかつてゲームの中で味わっていたものと同じなんじゃないかと思っていました。だから、バトルフィールドで流れる音楽や街の中で流れる音楽を自分で作ることができて、すごく楽しい体験でしたね。作曲中は「……街の音楽はもっとシンプルだったはず」とゲームを遊んでいたころの記憶を思い出していました。

――『ソードアート・オンライン』の音楽には、梶浦さんのゲーム愛が詰まっているわけですね。

 今回「ソードアート・オンライン ミュージックコレクション」を作るにあたり、全曲を聴き直したんです。これまで一期分やセクションごとに振り返ったことはあったのですが、全部を一気に聴きなおしたのはこれが初めてでした。あらためて「こんなに作ったんだ」といろいろなことを思い出しましたね。

――きっとライブで楽曲を聴く来場者も、いろいろなシーンを思い出すのかもしれません。

 今回は歌が入っている楽曲が全体の3分の1、いわゆるインストゥルメンタルの楽曲がだいたい3分の2という、劇伴ライブになります。『ソードアート・オンライン』のために描いた曲なので、ぜひ劇伴が流れたシーンを思い出していただけると嬉しいですね。きっと、ライブが終わったときには「『ソードアート・オンライン』って面白い話だったよね」と言う感想を持っていただけるような気がするんです。今回のバンドは、劇伴のレコーディングのときと同じ、素晴らしいメンバーがそろっています。私も演奏するのがとても楽しみです。きっと会場を『ソードアート・オンライン』の音楽で埋め尽くすことになるでしょうから……ぜひとも、音楽の世界に《フルダイブ》してください。

かじうら・ゆき
作曲家、作詞家、音楽プロデューサー。TV、CM、映画、アニメ、ゲームなど様々な分野で楽曲提供、サウンドプロデュースを手掛ける。その独特な深みのある楽曲は「梶浦サウンド」と称されている。

Yuki Kajiura LIVE vol.#13 "~featuring SWORD ART ONLINE~"

チケット一般販売受付中
3/21(月・祝)東京国際フォーラムA
3/26(土)・3/27(日)NHK大阪ホール

イープラス
インタビューや本人による動画コメント掲載中!

「ソードアート・オンライン ミュージックコレクション」

  • 初回生産限定盤(CD4枚組+特典BD)
    ¥4,500+税.
    SVWC-70111-5.
  • 通常盤(CD4枚組)
    ¥3,800+税.
    SVWC-70116-9.

梶浦由記によるTVアニメ『ソードアート・オンライン』(1期、2期、Extra Edition)の劇伴音楽集。
未収録・未発表楽曲含む全131曲を収録。
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